睡眠と目
睡眠と目の関係
睡眠と目は、密接な関係にあります。
睡眠は、脳を休めるためのもので、目は脳の一部です。睡眠も目も、脳という部分で、つながっているのです。
睡眠は、目に影響をあたえます。
睡眠をしっかりとることで、とうぜん目の健康が守られます。
睡眠中は、目がぐるぐる動いたり、涙の分泌がストップしたりして、日中とは違った目の状態になります。
反対に、目をとおして入ってきた光は、睡眠に影響をあたえます。
日中に、目から入ってきた光の量に比例して、夜に寝付きやすくなります。
夜間の強すぎる光は、目覚めをうながすので、眠りづらくなります。
そのほか、寝室の照明が明るいと、目の調節機能に、負担をあたえます。
明るい照明のもとで寝ていると、近視をひきおこすという説もあります。
睡眠中と目
睡眠中は、目に変化があらわれます。
睡眠には、浅いねむりの「レム睡眠」と、深いねむりの「ノンレム睡眠」があります。一晩で、このふたつの睡眠が、4〜5回、交互にくりかえされています。
レム睡眠中は、眼球がグルグルと動いています。
目が動くということは、脳を使っている証拠。事実、夢は、レム睡眠中に見ているといわれています。
反対に、ボーッとしているときは、目も動かないものです。
脳と目は一体なのです。深い睡眠である「ノンレム睡眠」では、目は動きません。つまり、脳が休止状態になっているということです。
また、睡眠中は、涙の分泌がとまります。
睡眠中は、まぶたが閉じていて、大気にふれず乾燥しないため、涙が必要ないからです。
体内時計と概日リズム
人間には、体内時計が内蔵されています。
そのため、たとえば「明日は6時に起きよう!」と決めて寝ると、ちょうどその時刻におきることができたりします。
こういった経験は、どなたでも一度はあることでしょう。
体内時計は、24時間11分になっています。
地球の自転周期である24時間より、11分だけ多いわけです。
これを概日リズム(サーカディアンリズム)といいます。サーカは、ラテン語で「約」、ディアンは、「1日」、あわせて「約1日」ということです。
このように、体内時計の概日リズムは、地球の自転周期とくらべて、少しずれています。そのため、つねに太陽の光を参考にして、体内時計を修正しつづける必要があります。
これが、太陽のあたらない地下室で生活していたとしたら、概日リズムを修正できなくなります。そうなると、体内時計は、どんどん伸びて、長い人で28時間になることもあるようです。
体内時計と視交叉上核
人間の体内時計は、太陽の光を参考に、概日リズムを修正しています。
この体内時計を管理しているのは、脳にある「視交叉上核(しこうさじょうかく)」というところです。
朝、目が覚めて、屋外を見たとき、明るい光が目のなかに入っていきます。朝の光は、まず、角膜から入り、網膜に届きます。ふたつの目にとどいた網膜の光情報は、視神経をとおって、脳までおくられていきます。
そして、脳にある「視覚野」までとどいて認識したときに、「見える」と感じます。
脳にとどく手前に、左右の視神経が交差する場所があります。
左右2本の視神経が交わることを、「視交叉」といいます。体内時計である「視交叉上核」は、この視交叉しているところの上にあります。
網膜からの電気信号が視交叉のところまできたとき、視交叉上核は、それを感知します。そして、朝だと認識して、体がめざめるのです。

視交叉上核とメラトニン
視交叉上核が光の情報をうけとると、それは、ちょっとはなれた「松果体(しょうかたい)」というところに伝えられます。
松果体は、メラトニンというホルモンを分泌する内分泌腺(ないぶんぴせん)です。メラトニンが分泌されて、血液中を流れていくと、全身の細胞は「眠れ」という指令をうけとることになります。そのため、眠くなっていきます。
視交叉上核に光の情報がとどいて、その情報が松果体に送られると、メラトニンの分泌がストップします。すると、眠気がいっきに取れて、体が目覚め、起きることができるのです。
そのため、朝おきたときは、体に光を当てるというより、意識して、「目に光を浴びるようにする」といいわけです。
もちろん、直接、太陽を見てはいけません。まぶたを閉じても感知できます。周辺の明るい光を見ればよいのです。
そうすると、いま述べたような現象が起き、スッキリ目覚めることができます。これが習慣になれば、体内リズムがととのい、いつも自然に、決まった時間に起きられるようになります。
日中の光と睡眠
朝や昼間に、どれだけ太陽の光を浴びたかが、夜の睡眠に影響してきます。
この場合も、日中の光の量を、視交叉上核が感知します。
日中、あびた光の量に比例して、夜に、メラトニンの分泌量が多くなります。
このため、夜にぐっすり眠るためには、日中に、30分程度でも外を散歩して、目から光をあびるといいのです。
その反対に、夜になっても、ゲームやパソコンなど、強い光をあびつづけていると、寝つきがわるくなることがあります。
目から入ってきた強い光の情報を、視交叉上核が感知して、松果体にメラトニンの分泌をおさえるように、指令をだすからです。
このため、寝る前は、しばらく部屋の照明をおとしてから、寝床に入ると、メラトニンが分泌されやすくなり、安眠することができます。
寝室の照明と目
寝室の照明は、目に影響をあたえます。
明るい照明は、目を閉じていても、まぶたをとおして目のなかに入ってきます。すると、「虹彩(こうさい)」は、目に入ってくる光の量を調節するために、瞳孔(どうこう)を小さくしようとします。
寝室の照明が明るいと、睡眠中、ずっと、虹彩が光の調節をしつづけなければならないのです。これでは、目が休まるひまがありません。
また、明るい光は、視交叉上核を刺激し、メラトニンの分泌をおさえてしまいます。メラトニンは、たいせつなホルモンです。若返りのホルモンともいわれています。
メラトニンは、強力な抗酸化物質でもあり、体内の活性酸素とたたかってくれています。
子供の視力と睡眠
明るい寝室での睡眠は、子供の視力に影響を与えると考えられます。
メラトニンは、6歳当たりまで、分泌量が多くなっています。
その後、メラトニンの分泌量は減少していきます。つまり、6歳あたりまでは、子供の成長に深くかかわっていると考えられます。
この事実は、子供の視力は6歳ごろ完成する、ということと符号しています。
子供のうちに、寝室を明るくしたまま眠ると、眼球の奥行きである「眼軸」が伸び、将来、近視になるという説があります。
反対に、睡眠時の光と近視に因果関係はない、とする立場もあります。
しかし、睡眠中に、目が休まずに調節をしつづけ、たいせつなホルモンであるメラトニンが分泌されない、ということは事実です。
このことは、子供の目にとって、いいことではないでしょう。
また、虹彩と、遠近調節を行なっている「毛様体筋(もうようたいきん)」は、同じ「ぶどう膜」という、ひとつづきの組織になっています。
虹彩筋の疲労と緊張が、毛様体筋の疲労と緊張をひきおこし、近視の遠因となることも考えられます。
以上のことは、大人でも、同様のことがいえます。
寝るときは、きちんと電気を消して寝ることが、目を休めるためには、たいせつといえそうです。
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